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環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

意外と良かったアメリカの反応

【10月13日 AFP】アル・ゴア(Al Gore)米前副大統領のノーベル平和賞受賞決定から一夜明けた13日、米各紙はゴア氏の地球温暖化防止への取り組みを讃える一方、受賞によってゴア氏が敗れた大統領選から7年後に、ジョージ・W・ブッシュGeorge W. Bush)大統領の敗北があらわになったと伝えた。  ワシントン・ポスト(Washington Post)は、「ゴア氏は20年以上もの間、著しい懐疑的態度と批判に直面しながらも地球温暖化の影響に対する警告を発し、主張を続けてきた」と述べ、今回の受賞をゴア氏の「汚名をすすぐもの」だとして讃えた。  ブッシュ大統領は、温暖化の原因となる二酸化炭素排出量削減の必要性は認めているものの、そのための具体的な数値目標を設定する国際的な取り組みには一貫して協調を拒んできている。  ニューヨーク・タイムズNew York Times)は、「地球全体を危険にさらす問題に警告を発すること、その解決に立ち向かうことを、たとえゴア氏が著名人だとしても、一個人や科学者たちの一パネルだけに委ねるべきではない」として各国政府の努力拡大を求め、なかでもブッシュ政権の対応については「無惨にも失敗した」と批判した。  ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)も同様の論調を展開し、論説コラムニストのJonathan Chai氏は「ゴアの勝利はジョージ・W・ブッシュに対する不評の大きさを測る指標だ」と述べている。  ダラス・モーニング・ニュース(The Dallas Morning News)も、ゴア氏は「依然として多くの国民の目にお高くとまった人物として映っている」ものの、過去に懐疑的な態度が示されてきたゴア氏の主張の正当性が裏付けられたと評した。  さらに社説ではゴア氏が「ずいぶんと時代を先取りしていた」と。「1992年に当時のジョージ・H・W・ブッシュ(George HW Bush)大統領は副大統領に立候補したゴア氏の環境問題に対する熱心さを物笑いの種にした。今日、それを笑う人はずっと少ない」。(c)AFP 以上引用  私は、アメリカ国内では、もっと冷ややかに受け止められるのではないかと思っていました。  アメリカのメディアの眼は曇っていなかったと、少し安心しました。  現政権のお抱えや、利害が絡む企業がバックについている、エセ専門家ではなく、まじめに研究している専門家に取材していけば、容易ならざる事態であることが分かりますし、現実に世界中で起きていることが、厳しい未来の姿を突きつけています。  メディアには、中立性は大事ですが、地球温暖化に関しては、これまで、懐疑派の意見をまともに扱うことで、国民に気休めの安心感を与えてしまったと思います。  これは、日本のメディアにも言えることです。  例えば、時事通信の次の記事。 ゴア氏に「不都合な判決」=出演映画に9つの科学的誤り-英裁判所  【ロンドン11日時事】11日付の英各紙によると、同国高等法院は10日、ゴア前米副大統領が出演した地球温暖化を警告する映画「不都合な真実」に科学的な誤りがあるとして、学校で上映する際には適切な説明を加えるよう求めた。  同法院は(1)映画で「近い将来、氷が解けて海抜は最大20フィート上昇する」とされているが、これは数千年ないしもっと後の話(2)「キリマンジャロの雪が解けたのは、地球温暖化による」とあるが、科学的に断定できない-など9つの誤りを指摘。学校での上映禁止要求は退けたものの、上映の際には生徒に対し「偏りがある」ことを注意喚起するよう促した。 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007101101097  時事だけでなく、ネットで検索できる日本のメディアのこの記事に関する情報は似たり寄ったりです。  しかし、AFPの記事を見ると印象は違います。
 最後の方に、このような背景が記載されています。  以下引用。  原告のDimmockさんは、非主流派政治団体「New Party」のメンバー。同組織は経済的自由主義、政治改革、および国際主義を掲げ、実業家や中小企業で働く人が支持者の中心となっている。  同組織は気候変動が重要課題であることは認めるものの、その原因が人間にあるとの論拠は絶対でないと主張し、新技術の開発、新しい原子力発電所の建設、および開発途上国でのクリーン・テクノロジー支援における「前向きな動機」の提供を提唱している。(c)AFP  このような背景があるとないとでは、記事に対する見方はずいぶん変わります。  そもそも、イギリスの一判事の判断をことさら取り上げるのもどうかと思いますが、紹介するのであれば、少なくともバランスは取って欲しいですし、できれば、人類の将来まで思いを至らせ、このような記事の取り扱いは注意して欲しいと思います。