日経新聞が、「外国人の意見」という形ではありますが、珍しく気候変動の本当の怖さについて掲載したので、触れておきたいと思います。
経済学者で、元欧州復興開発銀行総裁のジャック・アタリ氏のオピニオン記事です。
氏は今、確実に言えることとして、①気候変動に伴う災害は人類の活動に起因している②パリ協定(産業革命前からの平均気温の上昇を1.5度以内に抑える)は順守できない③平均気温は少なくとも4度上昇する、という3つを挙げています。
いずれも異存はありません。
先日の講演で使用した資料からご紹介すると、今程度の対策では、各国が掲げている政策が最大限実現できたとしても、気温上昇を1.5度に抑えるために必要な削減カーブはおろか、2度に抑えるためのカーブにも到底及ばないことがはっきりしています。
3度台で抑えられるかも怪しいのが現状ですから、4度上昇も十分ありえます。
そして、今より4度程度高かった4000万年前は、海面レベルが今より70m程度高かった、つまりほとんどの氷が解けていました。
今とは南極大陸の位置が違うので、平均気温が19度になっても、全部の氷は解けないかもしれませんが、数十mの海面上昇になることは確実です。
ですから、氏が指摘している、早急に対策を講じないと、水没するのは太平洋に浮かぶ島国だけでなく、世界各地で住めない地域が生じるというのも間違いありません。
詳しくは、『気候変動ってヤバイの?』の2作目で触れていますが、例えば中国では、すでに避けられない12mの上昇で上海は海面下になりますし、川沿いにおそらく数百km内陸まで海に沈みます。
数百年、数千年かけての変化ですが、たった100年位の私たちの行動がこの先数十世代に渡る人類に迷惑をかけるのです。
このままでは、私たちは、地球環境への影響が分かっていながら、欲望を抑えられなかった、人類史上最も愚かで迷惑な世代として語り継がれることになるでしょう。
ただ、氏が、「永久凍土が解けてメタンなどの有毒なガスが放出される」としている所は、もしかすると「有害」とした所が誤訳されたのかもしれませんが、メタンの一番の問題は、CO2の20倍以上、短期的に見ると100倍以上の温室効果があることで、もし4度も上昇すれば、自然に溶け出すメタンによる温室効果で、人類がCO2の排出をゼロにしても温暖化が加速し、10度以上の温度上昇になる可能性があることです。
氏の記事から、ここまでの危機を読み取ることはできないとは思いますが、それでも、これまでの日経新聞の記事の中では踏み込んだ方だと思います。
年平均の史上最高気温を記録することが確実になるなど、目に見える形で異常が相次いでいることが影響しているのかもしれませんが、まだまだ日本での報道は気候変動の恐怖の本質に目を向けなかったり、控えめすぎる表現が多いので、もっとしっかり伝えて欲しいと思います。
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