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環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

北極で温暖化が激しいのは海氷面積の減少が主な原因

 1989年から2008年の間に、地球全体の平均気温の上昇幅は0.5℃だったのに対し、北極域では2.1℃と、地球上で最も激しく上昇しました。

 その原因について、様々な論争があったようです。

 温暖化した時、極地の方が上昇幅が大きくなる事はよく知られています。

 全生物種で90%、海洋生物で96%が絶滅した、2億5000万年前にも、CO2やメタン濃度が高くなり、激しい温暖化が起きましたが、その時の平均気温は、赤道付近では、今より7度の上昇だったのに対し、極地では、25度にも達したとされています。

 その理由について、曇天の増加や海洋・大気の循環の変化という説もあったようですが、今回、メルボルン大学の、ジェームズ・スクリーン博士とイアン・シモンズ教授の研究によると、海氷面積の減少が主な原因だと分かったということです。

メルボルン大学

「Melting sea ice major cause of warming in Arctic, new study reveals」

http://newsroom.melbourne.edu/studio/ep-72

 ヨーロッパ中期気象予報センターの20年間のデータを分析し、気温の変化と、海氷面積に相関関係があることを発見したとの事です。

 まぁ、気温が上がったから海氷面積が減っただけではないのかと、考えられなくもないですが、気温上昇と海氷面積の減少は、正のフィードバックの関係にある事が分かっていますし、他の要因よりも、密接な相関関係が見られたという事でしょう。

 正のフィードバックというのは、どちらかが起きれば、もう一方の現象を促進し、その結果が、最初に起きた現象をさらに加速させる関係の事です。

 例えば、CO2やメタン、気温もそうした関係にあるとされています。

氷河期の氷期(寒い時期)から間氷期(暖かい時期・現在)に温暖化する際、太陽を回る地球の軌道や地軸の変化によって、気温が上昇し、それがCO2やメタン濃度の増加をもたらす事で、日射の変化だけなら3~4度にとどまる温度上昇の幅を10度程度まで拡大すると考えられています。

 気温と海氷面積の場合も同様で、気温が上がって海氷が溶けると、海面の面積が広がります。アルベドと呼ばれる、光の反射率が、氷と海面では大きく違うため、光を反射する海氷の面積が減って、吸収する海面の面積が広がると、ますます気温が上昇しやすくなるわけです。

 今回は、海氷と海面の関係ですが、陸地でも、雪氷に覆われているかどうかで、アルベドは大きく変わります。

 比較的安定している(と言ってもNASAの観測によると地球平均程度には温暖化している)南極についても、いったん、氷が溶けて陸地の面積が広がり始めると、温暖化が猛烈に進行する可能性もあると考えられますから、注意深く見ておく必要があると思います。