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環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

自民VS民主 環境分野のマニフェスト比較

 いよいよ衆議院選挙が近づいてきました。

そこで、与野党の中心となる自民党民主党マニフェストから、環境に関連する分野を抜き出してみました。

自民党

13ある大項目中5番目の「経済成長政策」で

「低炭素革命で世界をリードするとともに、安心・元気な健康長寿社会を目指して、引き続き大胆かつ集中的な経済対策を講じ、景気の確実な底入れ・反転により、平成2010年度後半には年率2%の経済成長を実現する。」

リスクマネーの供給による環境技術の強化」

環境にやさしい経済社会システムの構築 環境にやさしく無限に利用が可能な太陽光発電について、その普及を抜本的に拡大し、導入量を2020年(平成32年)に20倍、2030年(平成42年)には40倍にすることを目標として、太陽光発電世界一の座を獲得する。電気自動車やハイブリッド自動車など環境にやさしい次世代自動車について、自動車グリーン税制に加え、新たに導入された補助制度により買い換えを進め、1年間で100万台程度の需要を増やす。また、エコポイントの活用により、グリーン家電の普及を促進し、地球温暖化対策、経済の活性化や地上デジタル放送対応テレビの普及の同時実現を目指す。」

科学技術創造立国の実現 ips細胞や太陽電池をはじめとする生命科学・エネルギー技術など、世界をリードするわが国の革新的研究・技術開発を戦略的に行い、「第三期科学技術基本計画」による研究開発投資25兆円の達成を目指すとともに、時期基本計画における投資目標を設定し、拡充する。」

大項目7番目の「農林水産政策」で

農山漁村保全と発展可能性の実現 鳥獣害対策を進めるとともに、バイオ燃料太陽光発電、水路を活用した水力発電、木質バイオマスを支援する。」

森林対策の拡充 地球温暖化を防止し、豊かな自然環境を提供するわが国の森林について国有林も民有林も間伐などの森林の整備や治山事業を行う。貴重や森林を維持している森林所有者の負担のない事業を拡大する。また、公共施設・住宅から紙・割りばしまで国産材の利用率50%を目指す。緑の雇用を推進するとともに、木材価格の安定化のための制度を導入する。海外において違法に伐採された木材が流通しないよう違法伐採対策にも取り組む。」

大項目10番目の「資源・エネルギー」で

資源獲得・新たなエネルギーシステムの構築 安定的な資源・エネルギーを確保するため、主要な資源供給国との関係を深め、「資源外交」を強化するとともに、国内における水力、風力、太陽光など「再生可能エネルギー」の開発・利用や、原子力エネルギーの利用を強化(発電比率:25.6%→40% 発電所の設備利用率:58%(現行)→84%(平成10年水準))する。」

水の安全保障 世界的な人口増加や気候変動により大きな影響が懸念される日本と世界の水問題に対し、食料、エネルギーの安全保障の観点も含め、政産学官が連携して取り組み、次世代に豊かな社会を引き継ぐ。また、安全・安心な上・下水道を維持・管理し、資源の循環・再利用も含めた水循環プロセスが安定的かつ健全に行われる社会を構築するとともに、利害関係者が連携する流域単位の総合水資源管理体制を整える。また、膜技術、渇水対策や再生水水利用技術など日本の優れた水関連技術と知見で「世界の水危機」解決に貢献し、国際社会から尊敬される日本を目指す」

大項目11番目「環境・地球温暖化」で

低炭素社会づくりの推進による地球温暖化防止 地球温暖化問題の解決策として、国民全員参加による社会変革を進め、環境と経済がともに向上する「低炭素社会づくり」を推進する。そのため、太陽光発電の買取制度などを通じた再生可能エネルギーの需給拡大、省エネ住宅・エコカー減税をはじめとした税制全体の一層のグリーン化の推進、カーボンオフセットの本格展開などを進める「低炭素社会づくり推進基本法」を制定する。また、全ての主要排出国の参加による衡平で実効的なポスト京都の国際枠組作りを主導し、国際合意により世界全体の温室効果ガス排出を2050年(平成62年)に半減させることを目指す。交渉にあたっては、わが国の2020年(平成32年)の温室効果ガスの削減量の目標を2005年(平成17年)比15%削減とする。省エネルギー・省資源などの優位性を持つわが国の技術を活かし、国際協力を行う。

美しい自然と生物多様性保全 来年10月の名古屋市における生物多様性条約第10回会議の開催に向け、国民とともにわが国の自然を保全するための施策を強化する。また、アジアを中心に、生態系保全や持続可能な取組みを展開する。外来生物対策とともに絶滅危惧種の保護を進め、生態系の維持回復に努める。国立公園をはじめ「里地・里山」「里海」の美しい森や水辺を守る。また、日本人の自然観やこころを世界に発信し、世界の環境取組みに貢献する。」

3Rを通じた持続可能な資源循環 「もったいない」の精神を活かし、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の「3R」の取組みを徹底し、大量生産、大量消費、大量廃棄の社会から環境にやさしい循環型社会への移行をより一層進める。また、エコタウン、レアメタル資源回収等を通じた地域活性化を進め、さらに非食品セルロースや廃棄物利用によるバイオエタノールの開発を促進する。」

民主党

7つある大項目中4番目の「地域主権」で

ガソリン税軽油引取税自動車重量税自動車取得税暫定税率を廃止し、2.5兆円の減税を実施します。」

「高速道路は段階的に無料化し、物流コスト・物価を引き下げ、地域と経済を活性化します。」

(各論)

目的を失った自動車関連諸税の暫定税率は廃止する

【政策目的】

○課税の根拠を失った暫定税率を廃止して、税制に対する国民の信頼を回復する。

○ 2.5 兆円の減税を実施し、国民生活を守る。特に、移動を車に依存することの多い地方の国民負担を軽減する。

【具体策】

ガソリン税軽油引取税自動車重量税自動車取得税暫定税率は廃止して、2.5 兆円の減税を実施する。

○将来的には、ガソリン税軽油引取税は「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化、自動車重量税自動車税と一本化、自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止する。

高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る

【政策目的】

○流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる。

○産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する。

○高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの経済的損失を軽減する。

【具体策】

○割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していく。

戸別所得補償制度で農山漁村を再生する

【政策目的】

農山漁村を6次産業化(生産・加工・流通までを一体的に担う)し、活性化する。

○主要穀物等では完全自給をめざす。

○小規模経営の農家を含めて農業の継続を可能とし、農村環境を維持する。

○国土保全、水源かん養、水質浄化、温暖化ガス吸収など多面的な機能を有する農山漁村を再生する。

【具体策】

農畜産物の販売価格と生産費の差額を基本とする「戸別所得補償制度」を販売農家に実施する。

○所得補償制度では規模、品質、環境保全、主食用米からの転作等に応じた加算を行う。

○畜産・酪農業、漁業に対しても、農業の仕組みを基本として、所得補償制度を導入する。

○間伐等の森林整備を実施するために必要な費用を森林所有者に交付する「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入する。

大項目5番目の「雇用・経済」で

地球温暖化対策を強力に推進し、新産業を育てます。」

「2020年までに温暖化ガスを25%削減(90年比)するため、排出量取引市場を創設し、地球温暖化対策税の導入を検討します。」

太陽光パネル環境対応車、省エネ家電などの購入を助成し、温暖化対策と新産業育成を進めます。」

地球温暖化対策では、国の大胆な支援で、わが国の優れた技術力をさらに高め、環境関連産業を将来の成長産業に育てます。」

(各論)

地球温暖化対策を強力に推進する

【政策目的】

○国際社会と協調して地球温暖化に歯止めをかけ、次世代に良好な環境を引き継ぐ。

○CO2等排出量について、2020 年までに25%減(1990 年比)、2050 年までに60%超減(同前)を目標とする。

【具体策】

○「ポスト京都」の温暖化ガス抑制の国際的枠組みに米国・中国・インドなど主要排出国の参加を促し、主導的な環境外交を展開する。

○キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。

地球温暖化対策税の導入を検討する。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う。

○家電製品等の供給・販売に際して、CO2排出に関する情報を通知するなど「CO2の見える化」を推進する。

全量買い取り方式の固定価格買取制度を導入する

【政策目的】

○国民生活に根ざした温暖化対策を推進することにより、国民の温暖化に対する意識を高める。

○エネルギー分野での新たな技術開発・産業育成をすすめ、安定した雇用を創出する。

【具体策】

○全量買い取り方式の再生可能エネルギーに対する固定価格買取制度を早期に導入するとともに、効率的な電力網(スマートグリッド)の技術開発・普及を促進する。

○住宅用などの太陽光パネル環境対応車、省エネ家電などの購入を助成する。

環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する

【政策目的】

○住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する。

【具体策】

○リフォームを最重点に位置づけ、バリアフリー改修、耐震補強改修、太陽光パネルや断熱材設置などの省エネルギー改修工事を支援する。

建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化等、必要な予算を地方自治体に一括交付する。

○正しく鑑定できる人(ホームインスペクター)の育成、施工現場記録の取引時の添付を推進する。

○多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する。

○定期借家制度の普及を推進する。ノンリコース(不遡及)型ローンの普及を促進する。土地の価値のみでなされているリバースモーゲージ(住宅担保貸付)を利用しやすくする。

○木材住宅産業を「地域資源活用型産業」の柱とし、推進する。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成する。

環境分野などの技術革新で世界をリードする

【政策目的】

○1次エネルギーの総供給量に占める再生可能エネルギーの割合を、2020 年までに10%程度の水準まで引き上げる。

○環境技術の研究開発・実用化を進めることで、わが国の国際競争力を維持・向上させる。

【具体策】

○世界をリードする燃料電池超伝導バイオマスなどの環境技術の研究開発・実用化を進める。

○新エネルギー・省エネルギー技術を活用し、イノベーション等による新産業を育成する。

国立大学法人など公的研究開発法人制度の改善、研究者奨励金制度の創設などにより、大学や研究機関の教育力・研究力を世界トップレベルまで引き上げる。

エネルギーの安定供給体制を確立する

【政策目的】

○国民生活の安定、経済の安定成長のため、エネルギー安定供給体制を確立する。

【具体策】

○エネルギーの安定確保、新エネルギーの開発・普及、省エネルギー推進等に一元的に取り組む。

レアメタル希少金属)などの安定確保に向けた体制を確立し、再利用システムの構築や資源国との外交を進める。

○安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む。

大項目7番目の「外交」で

「国連平和維持活動、貿易投資の自由化、地球温暖化対策で主体的役割を果たします。」

(各論)

東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する

○通商、金融、エネルギー、環境、災害救援、感染症対策等の分野において、アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立する。

〈私的な感想〉

 自民党は、政権与党ですから当たり前とも言えますが、これまでの路線を踏襲しています。特に目新しい感じはありません。

 「リスクマネー」とか、「衡平」といった、官僚は使っても、日常生活ではまず使わない言葉や表現が注釈なくそのまま使われています。有権者向けにしては、配慮が足りない気がしました。

 民主党マニフェストでは、「キャップ&トレード方式」ぐらいでしょうか。例えば、「レアメタル」は、自民党マニフェストではそのままですが、民主党のものでは、「レアメタル希少金属)」と、注釈がつけてあるなど、理解を助けようとする努力が見られます。

 民主党が、CO2削減量について1990年を基準にしていること、また目標値も、2020年に25%減、2050年に60%超減と、自民党より意欲的である事は評価できると思いました。

 固定価格買取制度についても、今のところ、太陽光発電の余剰電力だけが対象として検討されていますが、民主党は、全量買い取りで、「再生可能エネルギー」と表現されているので、太陽光発電以外も対象になる可能性があり、再生可能エネルギーの普及にはより効果的だと思いました。

 民主党の目玉政策の一つ、高速道路無料化については、CO2排出につながるような印象がありますが、実際にどうなるかは、意外と予測が難しい気がします。

 現政権の1000円乗り放題は、トラックが対象になっておらず、主に休日に実施されるため、これまで公共交通機関を利用していた人が車にしたり、この機会に車で遠出するとか、排出増につながる事が明らかでした。

 しかし、無料となるとトラックも対象になります。これまでは輸送コストを抑える為に一般道を走っていたトラックが高速道路を利用すれば、大幅に燃費が改善すると考えられます。

 また、一般道の交通量が減って、走りやすくなる事による燃費改善効果もあるでしょう。

 ですから、全体としての車の通行量が増加する事は確かでしょうが、それが、そのままCO2排出量の増加に直結するかどうかは、予測が難しいと思います。

 高速道路無料化によって、新たに増加する通行量が非常に多ければ、CO2排出量は増えるでしょうし、増加がそれほどでもなく、一般道から高速道路にシフトする事による燃費改善効果の方が大きければ、CO2排出量は、逆に減少する可能性もあると思います。

 自動車関連税制の減税については、車を優遇する政策で、CO2排出増につながりますが、将来的には、地球温暖化対策税の導入を検討するとの事なので、その税額や使用目的によっては、CO2排出量を抑えられるかもしれません。

 環境問題への姿勢としては、車関連での不確定要素はあるものの、全体としては、民主党の方が積極的に思えました。

 さて、環境問題とは離れますが、一般市民の家計への影響についての私の感想です。

 自民党は、経済成長を重視し、企業が利益を上げれば、国民も豊かになるというのが基本的な主張です。

 ただし、これまで、昨年の金融危機発生まで、経済は成長し、企業も過去最高益を上げた所もたくさんありました。しかし、株主に配慮する企業が増えたため、拡大した利益の多くが、株主への配当に向けられ、株を持たない国民の豊かさにはつながって来なかったのが実態だと思います。

 自民党が言う「国民を豊かに」とは、私には、「(株を持っている)国民を豊かに」と、括弧書きが付いているように思えます。

 民主党の「子ども手当」や、高校生、大学生への支援策は、4人の子持ちで、現に子育ての費用に苦しんでいる我が家には魅力的に映ります。

 株を持っているか、子供がいるかで、両党の経済政策に対する印象はずいぶん違ってくると思います。

 マニフェストを比較した時点では、私の中では民主党が優位に立っていますが、これから投票日まで、各候補者や党首の発言に耳を傾け、最終的には、自分に得か損かではなく、これからの日本の舵取りをどちらに(もちろん他の党もありますが)、より任せたいと思うかをよく考えて投票したいと思います。