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環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

南極のウィルキンス棚氷崩壊の規模とは

 昨年から不安定化が心配されていた、南極のウィルキンス棚氷ですが、とうとう本格的に崩壊が進んでしまいました。  昨年の時点では、シャルコー島とラタディー島とがかろうじてつながっていて、大規模な崩壊を防いでいた感じでしたが、ついにその細い氷の橋が崩れ、一気に棚氷の細かい氷山への崩壊が進みました。  これがどの位の規模なのか、上の記事の写真だけではわかりにくいと思いましたので、Google Earthの写真も載せておきます。 20090502WilkinsIceShelfWide.jpg  まず、これが広めの写真です。 南極のどのあたりの話かが理解しやすいかと思います。 南米方向につきだしている半島の付け根に近い、南緯70度くらいの所です。 20090502WilkinsIceShelf1999.jpg  これは、Google Earthに現在も載っている、1999年に撮影されたウィルキンス棚氷の衛星写真です。上の記事の写真と比べていただければ、この10年でどの位崩壊が進んだかおわかり頂けると思います。  面積の感覚がつかみやすいように、ほぼ同じ縮尺の関東地方の写真を薄くかぶせてみました。 20090502Japan2.jpg  東京+埼玉+神奈川くらいの範囲で崩壊が進んだ事がおわかり頂けるのではないでしょうか。  棚氷は、氷河から海に押し出されて、ほぼ浮かんだ状態になっているので、溶けても、直接海面上昇にはつながりません。  しかし、棚氷は、氷河が海に流れ出すのを抑える栓のような働きをしていると考えられているため、棚氷の崩壊が進むと、氷河の速度が増して、内陸の氷が海に出て行きやすくなると予想されます。  そうなると、陸の上にあった氷ですので、それが溶ければ、海面上昇につながります。  ここのところ、南極での降雪量増加を大きく上回る形で、棚氷の崩壊、氷河、氷床の縮小が進んでいるというデータが次々に出ています。  現実的な危機管理として、日本でも短期間で海面上昇が進んだ場合の適応策を考えておく必要がありそうです。