しびれました。
甲子園の決勝、日本文理対中京大中京の試合は、9回、10対4と中京大中京の6点リードで、2アウトランナーなしとなった時点で、ほとんど、決着がついたようなものでした。
中京大中京の選手の中には、感動からか、守りにつきながら涙ぐんでいるように見える選手までいました。
「おいおい、まだ終わっちゃいないよ。泣くのは3アウトを取ってからにしな」と思いながら見ていました。
しかし、まさか本当に、その言葉がぴったり合うような展開になるとは思いませんでした。
1番バッターが四球で出塁し、2番が左中間へタイムリーツーベースで、日本文理が1点返します。このあたりまでは「最後に意地を見せた」といったところで、よくあることです。
ところが、この夏の頂点を決める試合はこれで終わりませんでした。
続く3番バッターが、ライト線へ3ベースでさらに1点返したあと、4番がファールフライを打ち上げます。
「ああ、これで終わった」と思ったら、なんと、打球を見失って、サードもキャッチャーも取れず。
これを見て、「あれ?野球の神様、まだ何かされるおつもりですか」と思っていたら、本当に、奇跡的なシーンが続きます。
4番はデッドボールで1、3塁となったところで、ピッチャー交代。
5番が粘って四球。満塁となって、6番がレフトへ2点タイムリー。7番もレフト前タイムリーでついに1点差となります。
なおも1、3塁で、一打同点です。
8番の痛烈な打球が、3塁方向へ行ったのを見て「ああ、同点だ」と思いました。
ところが、ボールはサードのグラブにダイレクトに飛び込んでいました。
ようやく試合終了。中京大中京が43年ぶりで、史上最多となる7度目の優勝を飾りました。
実は、中京大中京はこの春の選抜で、9回2アウトランナーなしから逆転されて敗退しています。
だからでしょう、今大会では、大量リードしていても、スクイズで1点を取りに行くような、「そこまでするか」と思えるほど、最後まで手をゆるめない野球をしていました。
そうした、取れる時には、1点でも多く取る姿勢のおかげで何とか逃げ切ることができたのでしょう。
それにしても、10対4のまま終わっていた場合に比べ、この劇的な粘りがあったことで、多くの人が感動しましたし、選手達も多くの学びを得ることができたように思います。
中京大中京の選手は、最後まで気を抜かないことや、いつでもベストを尽くすことの大切さが改めて骨身に染みたでしょうし、日本文理の選手も、あきらめないことの素晴らしいパワーや、人々に与える感動を実感したのではないでしょうか。
選手達の中には、このまま野球の道を歩む人も、これで野球から離れて行く人もいるでしょう。でも、どちらに進むにしても、一生の宝となる素晴らしい経験を手に入れたのではないかと思います。
いやー、「野球の神様さすがです」