未来の人類に生命あふれる地球を残そう!

環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

20万年以上氷期がやって来ない可能性が

BBC:温室効果ガスの排出が次の「氷河期を遅らせた」?

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-35309263#share-tools

人類によるCO2排出の影響で、すでに始まっていてもおかしくなかった氷期のはじまりが大幅に遅れ、10万年たっても始まらない可能性があるとのこと。

色々と注釈が必要な記事ですが、要するに人類がやってしまっていることの影響は、10万年以上続く可能性が高くなっているということです。

そもそも今は、氷河期です。

南極やグリーンランドなどに氷床と呼ばれる厚さ1km以上にもなるような氷の層がありますが、それは氷河期だからであって、地球の歴史上3分の2以上の期間はどこにも氷床がない状態で、それが普通なのです。

氷河期の中にも寒い氷期と、氷期氷期の間に暖かくなる間氷期があり、約1万年前から間氷期に入っています。

ですから、記事中「氷河期」とあるのは正確には「氷期」です。

また、「太陽から地上に到達する放射能の量」というドキッとする表現がありますが、これは太陽放射といわれる、太陽が地球に注ぐ、可視光だけでなく紫外線や赤外線なども含む放射エネルギーのことです。

私は講演で、次の氷期は約2万年後以降と考えられているが、今回の人類が起こしている地球温暖化の影響で、氷河期を抜けるかもしれないという話をしていますが、やはりその可能性が出てきているようです。

ミランコビッチサイクルと呼ばれる約10万年周期で、大陸が多い北半球への日射が多くなる時には気温が上がって間氷期となり、そうでない時には下がって氷期になります。

その平均気温に与える影響は数度ですが、CO2やメタンなどの温室効果ガスが、気温が上がる時にも下がる時にも加速させる効果があるため、10度位の変化になります。

今回、人類がCO2を始めとする温室効果ガスを大量に出していることによって、2万年後どころか、10万年後も氷期に入らない可能性が出てきているということです。そうなると、ミランコビッチサイクルから考えると、可能性が出てくるのは20万年後くらいですか。

南極大陸が地軸上にあり、冷気がたまりやすいため、いずれは氷期に入る可能性が高いとは思いますが、化石燃料を採れるだけ採って全部使い切ろうとするような愚かなことをすれば、永久凍土や大陸棚に大量にあるメタンハイドレートの融解を招き、CO2の数十倍というメタンの温室効果も加わって、本当に氷河期を脱してしまうかもしれません。

それはすなわち、氷床がすべて融解し、海面が72m上昇することを意味します。

地球としてはそれが普通の状態ですが、海沿いの平野に大都市を築いている人類にとっては大打撃です。

もちろん数年、数十年の話ではなく、数百年、数千年かけて進んでいく現象ですが、影響は甚大です。

実は、地球温暖化が海洋大循環の変化を招き、北半球は寒冷化、低緯度地域と南半球は温暖化という気候変動が起きる可能性も高まっているのですが、そのお話しをすると長くなるので、それはまた機会に。

気になる方は、こちらの記事「温暖化が引き金となる寒冷化のリスクについて」をご覧になるか、さらにく詳しくは著書「迫り来る気候変動の恐怖 ~地球温暖化が招く未曾有の危機~ 後編」をご覧下さい。

迫り来る気候変動の恐怖 ~地球温暖化が招く未曾有の危機~ 後編

「迫り来る気候変動の恐怖 ~地球温暖化が招く未曾有の危機~ 後編」

環境気候エネルギー出版 富永秀一著

定価300円