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環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

パブコメ本日まで 電気代をどんどん上げられる改定を認めるか

2022年7月20日に、経産省の電力・ガス基本政策小委員会が開かれ、今後の小売政策のあり方について中間取りまとめ(案)について話し合われました。

 

第52回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(METI/経済産業省)

 

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/052_03_03.pdf

 

その中では、P2にあるように、具体的な対策を整理したものについては直ちに実行に移すとされていますが、それにしても・・・という話です。

 

企業などが電気を新電力会社から高圧で受けていて、その電力会社が倒産したり、事業撤退するなどして、さらに他の電力会社への切り替えができない場合のセーフティネットとして、大手電力の送配電会社が電力を供給することが法律で義務づけられています。

これを最終保証供給といいます。

 

これはあくまで一時的な供給しか想定されていないのですが、電気の仕入れ価格高騰、供給力不足などから、新規の受付を停止している電力会社が多く、最終保証供給を受けている需要家(電気の購入者)が増えています。

 

送配電会社は、自前の発電所などは持たないので、その最終保証供給のための電力は、市場から調達して供給するのですが、今、市場の価格は、資源高や供給量不足などの影響で高くなっていて、約款で定められているkW時単価よりも高い価格で仕入れて、安く売らざるを得ないケースが出てきています。

 

そこで、最終保証供給料金を市場の価格に連動させる形に変更することがP7、8に記載されています。

 

また、電力が自由化される際、完全に自由にしてしまうと、強大な力を持つ大手電力会社の意のままになってしまうため、大手電力会社には、簡単には変更できない標準的な料金(標準メニュー)を定め、公表するよう、「適正な電力取引についての指針」において定められています。

 

P7において、その標準メニューでの新規受付が停止されていることを問題視し、「標準メニューの適用を受けられない現状が続くことは、望ましいとはいえない」としています。

 

しかし、現在の価格のままで標準メニューでの受付再開を求めるのは難しいことから、P9で、適正な電力取引についての指針に、「コストの変動をより適切に反映するため、標準メニューは、電気の調達手段や調達費用等に応じ、定期的に見直すことも考えられる。」と追記するとしています。

 

その上で、「現状、最終保障供給を受けている需要家については、他に選択肢がない中で、やむを得ず最終保障供給を選択せざるを得ない状況にあることが多いと考えられる」「標準メニューでの受付再開の見通しを立てないままに、一般送配電事業者による最終保障供給料金の改定のみが行われることは、こうした需要家保護の観点から望ましいとはいえない」としています。

 

そして、大手電力会社が、「標準メニューでの受付再開に向けた検討を速やかに進め、準備の整った事業者から、その見通しが示され次第、各一般送配電事業者において、既存の最終保障需要家への影響も配慮の上、速やかに本取りまとめの内容に基づき、最終保障供給料金を見直すことが期待される」としています。

 

なお、最終保証供給料金を見直す際に留意する必要があることとして、P8で、

➢ 需要家が使用量等を元に料金を算定することが可能となるよう、補正項の額について事前に HP に掲載し、需要家が確認できるようにすること
➢ 既存契約者や契約申込者に対して、事前周知を行い、丁寧に説明すること 

と特記されています。

補正項というのは、今のkW時単価に、多くの場合プラスされるkW時単価です。

 

また、委員会の中では、適正な電力取引についての指針についての新旧対照表を作成して、委員に確認してもらった上で、パブリックコメントにかけるとも案内がありました。

 

その後、中部電力ミライズ(小売事業者)は、早速、7月26日に、標準メニューの内容を見直し、2023年1月までに受け付けのための協議を再開し、4月から供給できるように取り組むと発表しました。

 

特別高圧・高圧の標準メニューの見直しの検討開始および低圧の一部料金メニューにおける燃料費調整制度の変更について|プレスリリース|中部電力ミライズ

 

この中間とりまとめを読めば、常識的には、来年4月に標準メニューでの電力供給を受けられるようになってから新たな最終保証供給料金が適用されると考えるのが普通ではないでしょうか。

 

そこまで待てないとしても、その3か月程度前、実際に標準メニューでの申込みができるようになってからでしょう。

 

ところが、中部電力パワーグリッド(送配電事業者)は、早くも8月10日に約款変更の届け出をして、9月から新たな最終保証供給料金を適用すると発表したのです。

 

最終保障供給約款の変更届出について - ニュース|中部電力パワーグリッド

 

まだ、標準メニューでの供給開始どころか、受け付け再開も、具体的な改定内容すら明らかにされていないのに!

標準メニューを定期的に見直せるようにする、適正な電力取引についての指針の変更についてのパブリックコメントの結果も分かっていないのに!

民意などどうでも良いと言うことですか?

どうせパブリックコメントをしても、作られた“民意”によって賛成多数になることが既定路線だからでしょうか。

 

なお、特別高圧と、一部の高圧の場合、9月からプラスされる料金が19日に発表されました。

 

市場価格調整単価 - 託送料金など|中部電力パワーグリッド

 

今の単価に補正項を加え、再エネ賦課金を加えると36.01円/kW時になります。

 

多くの高圧の場合は10月分からの適用となり、その金額は、8月30日に発表されるとのことです。

 

標準メニュー受付再開の見通しを示す、といっても予想スケジュールを示しただけという状態で最終保証供給料金を改定するという強引な手段に出る所を見ると、標準メニューの見直しについても、「月に1回だって定期的だ」といって毎月コロコロ変える、実質的な市場連動型になってしまうことも懸念されます。

 

追記する文章を定期的ではなく、「年に1度、または半年に1度」と、一定期間は変えられないようタガをはめるよう、パブリックコメントに意見を出しました。

 

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620122021&Mode=0

 

ちなみに本日までです。(もっと早く気付けぱ良かった!)

 

2022年9月17日追記

 

パブリックコメントの結果が公表されていました。

 

public-comment.e-gov.go.jp

 

私の意見と、それに対する考え方

 結構長く書いたのですが、最後の具体的な改正案の所だけに省略されていました。

 私としては、例え意見が反映されないとしても、電力の消費者の立場にも、もう少し配慮して欲しく、委員の皆さんには目を通して欲しかったのですが、9月15日の委員会では、「ヨーロッパではもっと激しい電気代の高騰が起きている」「日本では電力会社がまだまだ負担している。もっと料金に転嫁できるようにすべきではないか」という意見を言う委員もいて、電気代高騰に苦しむ消費者や企業に寄り添うような発言はありませんでしたので、おそらく、全文は読んで頂けなかったのだと思います。

 

 電力会社が、標準メニューを毎月変えるようなことにならないか、しっかり見ていきたいと思います。

 

 なお、8月30日に公表された中部電力パワーグリッドの市場価格調整単価を元に計算すると、10月分の最終保証供給料金も36.01円になります。

 

 また、中部のエリアプライスは、9月は今の所、8月より5円程度上がっているので、11月分は40円を超えるかもしれません。

 

 

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