未来の人類に生命あふれる地球を残そう!

環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

やはり大陸棚のメタンはすでに溶け出していた

 少し前に、「地球環境の激変につながりうる7つの転換点」http://ow.ly/YB9B という記事に触れて、「この写真は、すでにメタンハイドレートが溶け出しているという事ではないか」という懸念をお伝えしましたが、やはりそうだったようです。

 これは、私が講演などで以前から、「これが起きれば、もう人類の手では気候変動を止められなくなる可能性が高い」と警告してきた現象です。

 メタンは、都市ガスの主成分で、低温や高圧の条件になると、メタンハイドレートと呼ばれる、シャーベットのような状態になります。

 このメタンハイドレートは、大陸棚という水深が比較的浅い海底に大量にあり、その資源量は、今わかっている天然ガスの埋蔵量の数十倍とも言われています。

 メタンは、温暖化を進める温室効果が、CO2の20倍以上あるため、温暖化によって、水温が上昇して、それが自然に気化し始めた場合、気化すればますます気温が上昇し、気温が上がれば、ますます気化するという悪循環に入る心配があります。

 実は、今から2億5000万年前、全生物種の90%以上、海の生物では96%が絶滅した時、実際に起きたとされています。

 この時期、熱いマントルが対流によって地表近くまで上がってきたため、その熱や、火山活動が活発化したことによるCO2濃度の上昇によって、気温、水温が高くなり、メタンハイドレートの3割程度が気化したと考えられているのです。

 その時、赤道付近で今より7度、極地付近で25度も気温が高くなったと考えられています。

 しかも、メタンは化学反応によって海水中や、大気中の酸素を奪います。地層を分析すると約1000万年の間、海も大気中も酸素の濃度が非常に低い状態になったことが分かっています。そのせいで大絶滅が起きたというのが、現在有力な説なのです。

 ちなみに、大気中の酸素濃度は10%台前半まで落ちたと考えられています。現在は21%です。個人差がありますが人間は18%以下になると 低酸素症になりますから、10%台前半というのはかなり厳しい状態です。

 その、絶対に避けなければならない現象が、すでに起き始めているというのです。

 そして、私が驚いたのが、この記事の、「陸上の永久凍土のメタン放出については従来から研究されていたが、海底からの放出についてはあまり研究されていなかった。」という一文です。

 目を疑いました。この記事が本当なら、科学者達は、一体、何をやっていたのか?

 過去に生命誕生以来最大の絶滅を起こしたと考えられている、言ってみれば、CO2以上に警戒しても良い位のメタンの状態があまり研究されていなかったと言うのですから驚きました。

 水温が低い北極海でこの状態ですから、世界各地で、今後、驚くべき実態が明らかになってくるのではないかと思います。

 私は、今、かなりショックを受けると同時に、この事態に対して、一体、自分はどうすればいいのか、頭を悩ませています。

 講演、ブログ、Twitter、新聞、雑誌の記事、YouTube・・・考えられるできるだけの事はしているつもりです。

 出版の企画書も用意しました。危機を脱出するための方法も考えて提言書を各所に送りました。

 しかし、とても浸透しているとは言えない状態です。

 正直、無力さも感じますし、心が折れそうになる事もありますが、4人の子供たちを見ては、「ここであきらめるわけにはいかない!」と、心を奮い立たせています。

 子供たち、孫達、これから生まれて来るであろう数百億人の人類の命運は、今生きている私たちの行動にかかっているのですから。