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環境ジャーナリスト 講演講師 富永秀一 ブログ

国際理解講演会とパネルディスカッション

 これも、電車で移動中などに少しずつ書いていた文章です。  10月3日、愛知県一宮市で、環境問題を通して、国際理解を深めようという講演会と、パネルディスカッションがありました。 20081003Ichinomiya01.jpg <挨拶される谷一夫一宮市長>  一宮市は、2002年から2005年まで、色々な形で、連続して講演に呼んで頂いた所で、ほぼ毎回、市長さんもお聞き頂いています。 20081003Ichinomiya02.jpg  今回は、国際理解という、いつもとは少し違う軸も交えての講演なので、地球環境全体の現状や、今後予想される未来に関する部分を長めにお話しました。  パネルディスカッションでは、4人の外国籍の方に、お話を伺いました。 20081003Ichinomiya03.jpg  キリバスの方は、海面上昇の影響で、井戸水が飲めなくなったり、大潮の時の浸水被害がひどくなっている現状や、祖国が、海に沈むかもしれない事の悲しみを話して下さいました。 一年で一番潮位が高くなるKing tideの時のキリバスの様子(Green peaceのページ)  私は、キリバスの大統領が昨年、来日した際、新聞のインタビューに答えた内容を紹介しました。 大統領は、温暖化対策がなかなか進んでいないことから、すでに国土の水没は避けられないと認識し、全国民の移住を検討しているそうです。 そして、単なる避難民ではなく、手に職を持った労働力として、受け入れ先で自立して生活していけるよう、アメリカ、日本、オーストラリアなどに対し、職業訓練を受けさせて欲しいと、要望していました。  私は、例えば、CO2の排出量に応じて、環境難民の職業訓練や移住受け入れを割り当てる、といった国際的な取り決めが必要になってくるのではないかと考えをお話しました。  ブラジルの方は、ガソリンに替わる燃料として普及が進んでいるエタノールや、ディーゼル燃料として使われ始めている、トウゴマから取れるひまし油について、紹介して下さいました。 20081003Ichinomiya04.jpg日系ブラジル人の田多井功さんと〉  私は、ブラジルで行われている、サトウキビからのエタノール作りは、アメリカで行われている、トウモロコシからのそれに比べ効率が良いことや、トウゴマは食べられないので、食料との競合の問題が起きにくく注目される、という話をしました。 20081003Ichinomiya05.jpgウズベキスタン人のフジャエフ ノジムジョンさんと〉  ウズベキスタンの方は、20世紀最大の環境破壊と言われる、ウラル海の縮小について紹介してくださいました。 ウラル海は、かつて、世界で4番目に広い湖でした。 しかし、綿花生産のため、注ぎ込む川から、水が過剰に取られるようになり、水の供給が大幅に減ったウラル海は、15mも水位が下がってしまったのです。 塩分濃度は30%に達し、魚は死に絶えてしまいました。 アラル海について(Wikipedia)  1つだった湖は、3つに分かれてしまったのですが、北側のアラル海は、南側への水の流れを止めるダムが造られ、水位が上がり始めているそうです。 「拡大に転じた北アラル海と縮小が続く南アラル海」(宇宙航空研究開発機構のページ)  しかし、ウズベキスタン側の、南のアラル海の方は、そちら側に注ぐ大河が、7カ国も通っているため(北側は2カ国)、取水を制限する合意が難しく、見通しが立っていないそうです。  実は、温暖化が進むと、中緯度の地域で降水量が減ると予想されています。 ウラル海に注ぐ川の流域も中緯度です。降水量が減れば、取水量の制限について各国の合意を得る事はますます困難になると思われます。  温暖化が解決を難しくするとなると、私達の生活とも無関係とは言えません。  最後は、フィリピンの方でした。貧困からゴミの山の近くに住み、売れる物を漁って生活しているスカベンジャーと呼ばれる人達がいるという社会問題や、その人達が、台風で起きたゴミ山の崩落で生き埋めになり、大勢が犠牲になったという事故の事などをお話し下さいました。 フィリピン等のスカベンジャーの問題(東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程 鳥飼行博研究室のページ)  私は、フィリピンと日本の間で結ばれようとしていた、JPEPA(日比経済連携協定)の話をしました。 この協定について、日本では、フィリピン人の看護士や介護士を受け入れるかどうかが話題になっていますが、実は、日本がフィリピンに関税なしで輸出できるようになる物のリストに、ヒ素、水銀などを含む灰や残渣、医療廃棄物、廃有機溶剤など、有害な廃棄物が含まれていることが、フィリピンで問題になり、協定締結への反対運動が起きていたのです。 JPEPA問題(化学物質問題市民研究会のページ)  この内容はフィリピン側に提示された英語版にだけ載っていて、日本語版には載っていません。ほとんどの日本国民が知らないところで、フィリピン国民の怒りを買っていたのです。  ちなみに、先日、JPEPAが発効したという小さな記事が新聞に載っていましたが、有害物質輸出のことには触れていませんでした。  今回のパネルディスカッションは、様々な角度から、国際的な環境問題について考える機会となり、コーディネートした私にとっても、大変有意義な時間でした。